室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

韓国医療危機、研修医の免許停止措置とその波紋

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韓国での研修医の職場離脱問題が国による免許停止措置へとエスカレートしている状況は、医療界にとって深刻な問題になっています。

この措置の対象となる研修医は約9000人に上り、韓国の医師総数が約13万人であることを踏まえると、全体の約1割に相当します。(最終的に免許停止措置となるのが7000人程度という報道があります)

これは医師数が1000人当たり2.3人と報告されている韓国にとって、医療提供体制を医師増員で換えていこうとする韓国にとって大きな転機になるのだろうとみえます。

日本の医師数が約30万人で、実は韓国と同等の医師数です。日本はこれを見てどう考えるか、注目されるところと見えます。

医師の増員を巡る議論は、韓国に限らず日本でも賛否両論があります。地方に医師が定着しない問題が存在する一方で、医師は十分足りている見方もあります。増員が進めば、一般論として医師の給与が低下する可能性があり、これに対する反対の声が高まるのは自然な流れです。特に韓国では、小児科をはじめとする一部診療科での収入差が顕著になっており、医療が成立しないほどの低収入に直面している状況が予想されます。

医師の育成は国際的に見るともう少し推し進めてもよいでしょうが、医療のタスクシフトを進めることも同時に進める必要があると思われます。この辺りは、ここで書くと話が複雑になるので措きます。

韓国では国民皆保険制度があり、診療所の外来は3割負担ですが、大きな病院では自己負担が増えるという制度上の差異が存在します。このような制度により、特定の診療科では厳しい状況に置かれている可能性があります。

また、韓国が美容医療で有名なことを考えると、自由診療と保険診療の間での需要と供給のバランスが大きく異なり、医療全体に歪みが生じていることも予想されます。

日本と韓国の微妙な違いが、大きな違いになり、医療の混乱につながっている可能性があります。免許停止という厳しい措置により、韓国の医療界はさらなる混乱に陥りそうです。これは、医療提供体制の持続可能性に対する深刻な脅威であり、引き続き注視する必要があります。

韓国での医師の置かれている状況は、日本を含む他国の医療制度や医師の働き方に関する議論にも重要な示唆を与えるものと考えます。今回の問題は、医療政策の策定における慎重な検討と、医師との対話を重視する必要性を改めて強調しています。今後もこの問題の展開とその影響について、深く掘り下げてみようと考えます。