室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

グローバルな視点で捉える医師の働き方改革、日本と韓国の動きを解析

日本では医師の働き方改革が大きな問題になっていますが、韓国でも働き方改革は大きな問題になっています。しかもそれが異常事態といっても大袈裟ではないかのように、大騒動になっています。その辺りをこのブログでしばらくウォッチしようかと思います。

韓国の医師ストライキの現状

ざっくりいうと次のような事態です。

出典: jp.reuters.com

韓国政府は、政府による医学部増員計画に抗議してストライキを行っている研修医に対し、2月末までに職場に復帰しなければ医師免許の停止を含む法的措置を講じると警告。

  • ストライキには国内研修医の3分の2以上が参加
  • 病院での混乱。救急治療室が患者の受け入れを拒否。手術が延期。

韓国の政府は、3月1日までに職場に復帰しない場合、少なくとも3カ月間の医師免許停止などの措置が取られる可能性があると指摘。

政府はこれまでにも職場復帰命令に従わなければ逮捕や訴追の可能性があると警告したが、2月29日までに復帰すれば過去の行動について責任を問わないという最後の要請。

政策に対する国民の支持は高く、韓国ギャラップの世論調査によると、約76%の国民が医学部増員計画を支持。大統領の支持率は41.9%に達し、8カ月ぶりに40%超え。

医師増員の意味と影響

医師を増やすことで、医療の提供体制を大きく変えるというものです。日本でも医師が増やされる方向にあると思います。個人的には職能のある人が増えることは良いと考えます。競争が生まれて、診療がより良くなる可能性もあるからです。問題は、あぶれる人材が出て、職能を持つ人にとっては、状況が好転することは少なく、待遇の差の拡大が起こることが予測されることでしょう。

また、日本でも起こっていますが、社会を維持するために必要とされる、福祉の役割を担う医療分野は、収入が多くはないことで、医師が自由診療に流れるという状況があります。韓国でも美容医療が盛んですが、今回の騒動では、小児科が劣悪な状況ということが注目されています。日本でも同じような状況はあり、かつては産科や小児科の診療報酬を上げるような対策が打たれました。改善していますが、どうしても診療科による差が不満を生むところはあるのだろうと考えます。

この騒動はどうなることか、またお書きしようと思われます。