医師も気づいていないムダがある?
一方で、医師が知らずにムダな医療を行っている場合、というのも多々あります。医師が知らず知らずのうちにムダな医療を提供しているというのは信じがたいことのようにも思えますが、医療の分野では日々、新しい発見が続いています。専門分野ならまだしも、専門外の分野での進歩には目が届かないことは十分にあり得るでしょう。
これまでは意味があると考えられていた医療行為に、実は行う意味があまりない、ということが研究によって判明するといったケースはよくあります。医師が新しい知識にアプローチする機会がない場合には、知らずに従来通りの医療行為を行い、結果としてムダな医療を行うこともあり得ます。
この点をもって「だから医師は信用できない」、と批判するのは得策ではないと私は考えています。そうした医学上の新しい発見が医療現場に活かされるような仕組みづくりこそが求められるべきで、個々の医師の知識状況について非難するのは酷ではないか、と考えているからです。後でお伝えするように、このような問題を乗り越える動きが世界的に進められており、注目されています。
(第5回終わり。第6回に続く)