認知症の薬──コリンエステラーゼ阻害薬は効くのか?
10年間でほぼ3倍になったアルツハイマー病
高齢化の進展とともに、認知症への関心が高まっています。認知症にはいくつかのタイプがあり、アルツハイマー病が半数以上を占めているほか、脳卒中の後に起こる血管性認知症などがあります。
中でも増えているのはアルツハイマー病です。厚生労働省の患者調査によると、2014年の調査で、医療機関で何らかの対応を受けているアルツハイマー病の総患者数は53万4000人。ほぼ10年前の2005年に行われた同様の調査では17 万6000人でしたので、およそ3倍になり、ハイペースで増えていることがうかがえます。厚生労働省の推計では、医療機関での対応を受けていない人も含めれば、2014年時点での認知症患者は462万人に上っているとされています。
認知症の症状は、物忘れのほか、時間や場所がきちんと把握できない、理解力が落ちる、などがあります。医療機関においては、認知機能の状態の検査のほか、脳の画像検査による病変の有無の確認などが行われます。認知症だと分かったときには、生活の支援が検討されたり、場合によっては薬による治療が行われたりすることになります。
薬はあくまで手段の一つ
認知症で使われている薬は、コリンエステラーゼ阻害薬と呼ばれる薬です。ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、ネオスチグミンなどがあります。脳の神経の働きを保つ効果を持つとされている薬ですが、チュージング・ワイズリーのキャンペーンの中で、たとえば米国老年医学会は、認知症においては継続的に認知機能への効果や消化機能への副作用を確認せずに、これらのコリンエステラーゼ阻害薬を使わないように、としています。
コリンエステラーゼ阻害薬は、認知機能や身体機能を改善させたり、生活の質を良くしたりもできますが、やはり副作用も問題になります。よく指摘されるのは、攻撃性が高まることです。薬を使うことで乱暴になるなど行動異常が出てくるのです。しかも、この薬を1年を超える期間にわたって使ったときの効果やリスクがよく分かっていないところもあります。
ですから、当然のことではありますが、治療がどのように効果をあらわし、副作用が出ていないかを適切に見極める必要があります。12週間くらい使い、効くかどうかを確かめ、効いていればよいのですが、効いていないときには中止するという判断も必要になってくるでしょう。
認知症と付き合っていくためには、認知機能、身体機能、行動についての問題を解決するための対策を介護なども含めてトータルにとっていくことが大切になります。その手段の一つとして薬を取り入れていくような考え方をするべきでしょう。