室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

がん検診をもう行わなくてもいい年齢 (15回)『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』(室井一辰著,洋泉社,2019)

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術
がん検診をもう行わなくてもいい年齢

 がん検診を控えるよう訴えているのは、米国一般内科学会です。この学会は、がん検診は平均余命が10年未満の人には推奨できない、としています。がん検診は、がんを見つけられるかもしれないという点ではもちろんメリットがある一方で、がんが見つかっても見つからなくても、本人にとっては検診することが負担になるという点を問題視しています。平均余命が限られた人ではそのデメリットは無視できません。検診は、寿命にとってのデメリットがないと判断できる場合に限るべきだ、と学会は提唱しているのです。
 これは平均余命を目安にした考え方で、本人の年齢から死亡年齢までの期間、すなわち余命を推定したときに、それが10年未満となっているならば、検査や検査後の治療を受けるのはメリットよりも負担の方が大きくなるだろう、というものです。健康寿命を延ばすための検診が寿命を縮めるというのであれば、それはムダな医療である、というわけです。

(第15回終わり。第16回に続く)