室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

特にメリットのないがん検診の数々 (16回)『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』(室井一辰著,洋泉社,2019)

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術
特にメリットのないがん検診の数々

 同じように、余命を基準にした場合の検診の必要性については、さまざまな学会から不必要であるという指摘が出ています。
 さらに、乳がんの手術の分野を世界的にもリードしている米国乳腺外科学会は、平均余命が5年を切ってからは、症状が特にないならば、マンモグラフィーを行わないことを勧めています。結局のところ、行ったとしても寿命を延ばすようなメリットが特には見出せないからです。誤ってがんだと判断されてしまい、無用な治療を受けてしまうような危険の方が無視できない、というのがこの権威ある学会の判断です。
 やはり腎臓の分野で世界的にも有力な米国腎臓学会からも、検診についての見解が出されています。透析を受けているなどの理由で、腎臓の機能が落ちているような人の検診はあえて行う必要がない、と考えているのです。マンモグラフィーや大腸内視鏡、前立腺がんを見つけるためのPSA検査、子宮頸がんを見つけるための細胞診といった検査です。
 日本において考えるべきなのは、がん検診を受けたときに、がんが見つかってめでたしめでたし、で終わるだけではなく、がんが見つかったとしても、その治療を受ける負担まで考えたとき、本当に検診を受ける意味があるのかどうかを、医療機関と相談する姿勢こそが大切です。じゃあ病気があっても検査をしないのかといえばそうではありません。体のどこかに違和感のある症状があるときに、医療機関に行けばよいのです。検診は症状がなくても受けるものですが、ここまでご説明したようなケースでは、症状がないうちから検査をしなくてもよい、というエビデンスが積み上がっています。症状も特にないけれどとにかく検診は受けておかないと、という考え方から転換するのは大切です。

(第16回終わり。第17回に続く)

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