室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

米国の公的機関も「推奨できない」(24回)『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』(室井一辰著,洋泉社,2019)

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術
米国の公的機関も「推奨できない」

 卵巣がんの検診をめぐっては、2018年に国際的にも注目された見解が米国で出されています。医療行為への提言を行っている公的機関、米国予防医学専門委員会(USPSTF)が、やはり症状のない女性を対象とした卵巣がんの検診について「推奨できない」とする方針を発表しました。過去のエビデンスを検証して、やはり卵巣がんの検診には女性の死亡率を下げるような効果がないと指摘しているのです。さらに、がんではない女性を手術する危険についても指摘しており、その悪影響が甚大になる可能性もあるとしています。
 検診は受けて安心、というだけではないというのが国際的な常識になっているわけです。卵巣がんは疑うべき検診の典型として注目されるようになっています。
 ではどうしたらよいのかというところですが、無症状なのに念のため検診を受けるというのが問題なのであって、何らかの症状を感じている人が検査を受けることを否定はしていません。ちょっとしたおなかの痛みや胃腸の不調に気をつけて、気になったときに婦人科などに相談するのが良いと考えられています。