室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

何もないのにがんだと疑われる危険(23回)『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』(室井一辰著,洋泉社,2019)

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術
何もないのにがんだと疑われる危険

 一方で、この卵巣がんを調べるための検査方法も確立しています。血液の検査でがんが出しているたんぱく質を検出する、超音波検査で卵巣を調べる、といった方法です。そうした検査を受けることで、早期発見につながるといけばよいのですが、これもそう単純ではありません。卵巣がんを早期に見つけたくとも、検診すればいいというものではないのです。そんな見解を出しているのは、米国婦人科癌学会。卵巣がんの検査のために、血液から検出されるがんの可能性を示すたんぱく質「CA125」を調べる検査や「超音波検査」をそもそもがんの可能性が低い年齢の若い女性、家族でがんになった人のいない女性に対して行ってはいけない、としているのです。超音波検査は、身体の中に超音波を当てて内部を画像で確認する検査です。健康診断で受けることも多いでしょう。卵巣の状態を見るときには、超音波を出す棒状の「プローブ」と呼ばれる器具を膣から入れて卵巣を画像に映し出す方法を取ります。日本でも女性向けの人間ドックのメニューに入っていて、受けたことがある方もいるかもしれません。
 ところが、その意義は小さい、というのがチュージング・ワイズリーの考え方です。これまでの研究から、症状がない女性に行っても、卵巣がんの早期発見にもつながら
ず、死亡率を低下させる効果も示さない、と証明されているのです。それどころか、がんにかかってもいないのに、がんだと疑われて、ムダな精密検査を受ける可能性があると指摘されています。検査のために合併症を起こして、命が危険にさらされる恐れもあると見られています。

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