【第56回】
受けたくない医療53【消化器科】
胸やけに安易に薬を使わない
米国消化器病学会、米国病院医学会
胃から酸が上がって食道や喉を荒らす、いわゆる「胸やけ」は、最近では「逆流性食道炎(GERD)」と呼ばれている。その治療として、制酸薬が使われることが少なくない。
米国消化器病学会は、「逆流性食道炎の治療をする時、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やヒスタミン2(H2)阻害薬といった制酸薬を長期にわたって使うならば、徐々に減量して、効果を示す用量の範囲の中で最も低い用量にしていくべき」と説明する。要するに、最低限の用量まで減らしなさいというわけだ。
制酸薬を減らしたり中止したりした時、症状の重症化が起こる可能性はある。学会によれば、維持療法の必要性および薬剤の用量を減らす時の注意点として、症状を緩和させるというよりも、症状によって患者が生活のうえで困っているかどうかを考えて決めるとよいと指摘する。胸やけがたまに起こっても困らないというならば、薬は用いないに越したことはない。
また少し専門的だが、米国病院医学会は新生児のGERDについても言及する。「新生児のGERDに、安易に制酸薬を使ってはならない」と言う。制酸薬は子供のGERDを抑制しないと臨床研究から示されているからだ。
PPIを新生児に使う懸念としては、小児のGERDの診断基準が明確ではない点がある。新生児に対する制酸薬の有効性もはっきりしていない。有害事象が制酸薬によって起こる可能性もある。慎重になるべきだ。