室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(87回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)ピンクアイに抗菌薬は禁物 米国眼科学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第87回】

受けたくない医療84【眼科】
ピンクアイに抗菌薬は禁物
米国眼科学会

 流行性角結膜炎とは、アデノウイルスというウイルスによる目の感染症だ。アデノウイルス結膜炎とも呼ばれる。目がピンク色になるのでピンクアイとも言う。米国眼科学会は、「ピンクアイでは、抗菌薬を処方してはならない」と指摘している。
 ウイルスに抗菌薬が効くはずはないが、予防目的で抗菌薬を処方するケースはあるようだ。しかし、学会はアデノウイルス結膜炎と細菌性の結膜炎は感染の様式が異なると指摘。眼科医であれば、臨床上の兆候や症状から区別して診断可能で、抗菌薬を処方することはないと説明する。
 そのうえで、必要であれば細菌培養を行って、細菌性の結膜炎と判明した場合にのみ抗菌薬は有効で、しかも中等度から重度の感染性炎症がある場合に有効と強調する。抗菌薬の過剰投与によって、結果として治療に反応しない細菌の出現を助長し、治療を困難にする問題にこそ目を向けるべきだと指摘する。
 診断の不確かさを考えるならば、慎重に経過を見て、自然に治癒するかどうかを判断する余裕こそ重要なのかもしれない。

(第87回おわり、第88回へつづく)