室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(92回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)中耳炎や外耳炎で抗菌薬を飲むな 米国家庭医学会、米国耳鼻咽喉科学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第92回】

受けたくない医療89【耳鼻咽喉科】
中耳炎や外耳炎で抗菌薬を飲むな
米国家庭医学会、米国耳鼻咽喉科学会

 風邪で抗菌薬を処方しても意味がないということは前述した通りだが、同じことは中耳炎でも言える。米国家庭医学会は、「2~12歳の子供の中耳炎では、経過観察が可能で、症状が重くないと判断できれば抗菌薬を処方してはならない」と安易な抗菌薬の処方に警鐘を鳴らす。
 経過観察というのは、48~72時間は抗菌薬の治療を待って、症状が和らぐかどうかを確認するということだ。観察するか治療するかは子供の年齢、診断の確かさ、疾病の重さから判断する。抗菌薬による治療をせずに観察する場合は、両親と医師とが十分に話し合う必要がある。子供の病状を見ながら治療の方針を判断して、むやみに薬に頼るなということだ。
 中耳炎だけではなく、外耳炎でも同じように問題がある。急性外耳炎も同じように安易に抗菌薬は使うべきではない。米国耳鼻咽喉科学会は、「急性の外耳炎では、重症でなければ経口の抗菌薬の処方をしてはならない」と指摘する。
 経口の抗菌薬は有害性も伴うから要注意。経口の場合、うまく抗菌薬の効果が発揮されるとは限らない。一方で外耳は中耳と違って、直接、抗菌薬を塗ることができる。局所で投与される抗菌薬は細菌への抗菌性を発揮しやすいようだ。経口の抗菌薬を避けると、耐性菌の発生も回避しやすくなり、日和見感染症(※ 35 )を防ぐことにもなる。

※35 「ひよりみかんせんしょう」と読む。体力が落ちた時や免疫力が落ちる病気にかかった時に、普段ならばかからない病気にかかることを指す。

(第92回おわり、第93回へつづく)