室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(41回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014) 受けたくない医療38【整形外科】 リウマチで安易にMRI検査をしない 米国リウマチ学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第41回】

受けたくない医療38【整形外科】
リウマチで安易にMRI検査をしない
米国リウマチ学会

 リウマチ(※23)といえば関節炎の存在が問題になる。MRI検査で関節の検査を受けるのも珍しくはない。しかし、米国リウマチ学会は、「関節炎の検査のために、MRI検査を安易に行ってはならない」と指摘する。関節リウマチの診断と予後予想のために、MRI検査を実施するのは適切ではない。現在までの臨床研究の見解としては、MRIを行わないのが妥当と見られている。
 学会は、MRI検査で得られる価値と比べて検査費用が相対的に高すぎると指摘する。学会は、「骨浮腫(※24)を1回のMRI検査で診断して、リウマチの進行を予想することは可能と言えるかもしれない。一方で、MRI検査は現在の標準的な医療の中では出費がかさみすぎる」と問題視する。日本ならば、3万円程度の費用となる。3割負担で費用が抑制されるので問題にはなりにくいが、過剰診断の批判が海外で出ているのは知っておいてもいいだろう。
 標準的な医療とは、診察による評価や単純X線写真による検査で対応した場合。標準的な医療で十分にリウマチの診断は可能というのが学会の見方であるようだ。

※23 感染症やガンなどの異常が発生すると血液中の抗体と呼ばれる物質が作用して、感染症やガンなどを無力化することができる。この抗体が病的な状態になって自分自身の細胞を攻撃する場合がある。これを自己免疫疾患と呼んでいる。リウマチは自己免疫疾患の一つで、関節や骨、筋肉を傷めるタイプの病気である。

※24 関節リウマチは自らの抗体で骨の膜や軟骨が破壊される病気。骨の損傷によって、骨の中に水がしみだして膨らんだような状態になることがある。外力に弱くなり、さらに関節破壊を促してしまうのが問題だ。

(第41回おわり、第42回へつづく)