室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(71回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)重症ではない頭痛に画像検査は不要 米国放射線学会、米国頭痛学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第71回】

受けたくない医療68【脳神経】
重症ではない頭痛に画像検査は不要
米国放射線学会、米国頭痛学会

 
 頭痛は場合によっては脳出血や脳梗塞にもつながるので大きな不安を伴うが、心配しすぎも問題だ。米国放射線学会は、「重症ではない頭痛に対して画像検査は必要ない」と指摘している。
 強い外傷があって意識を失っている、あるいは進行したガンで転移の可能性があるといったリスク要因がなければ、画像検査は治療や治療成績を改善する効果を持ち合わせていない。しかも、本当に画像検査が必要な頭痛は、一般的な診察でも拾い上げられると臨床研究でも明らかだ。多くの臨床研究や臨床経験によれば、画像検査を行わずに重症の頭痛を見極めることは可能だ。むしろ画像検査をしたばかりに、全く関係のない有害性の不明確な異常が見つかることもあり、対処に困ったり患者の出費の原因になったりしてしまう。
 頭の異常だと、素人目には心配になって、画像検査に意味がありそうに思えてしまうが、そこは不要かもしれないと見る目を持ちたい。そもそもこれまでも見てきたように、CTにせよMRIにせよ、実施するとなると3万円程度の費用がかかるのだ。
 さらに、米国頭痛学会は画像検査をするとしても注意点を挙げる。「頭痛の診断では緊急時以外、またはMRI検査を行える時にはCT検査を行わない」というものだ。頭痛で神経画像診断をする際には、CT検査よりもMRI検査を優先するわけだ。
 出血が起きた場合、急性の脳卒中がある場合、頭部外傷のある場合といった緊急時を除き、MRI検査をまず行う。MRI検査はCT検査と比べてガン、血管の疾患、 後頭蓋窩や脳髄質の病変、脳内圧の高低を検出する能力に優れる。一方のCT検査は患者を放射線にさらすので、ガンのリスクを高める問題もある。MRI検査は既知の生物学的なリスクは伴わないので好ましい。
 学会は片頭痛についても画像検査を行わないよう求めている。ガイドラインの多くで、片頭痛では脳内の疾患のリスクは高まらないと示している。
 もちろん、重度な頭痛の中には、片頭痛以外のケースも紛れている。だから、重症の頭痛を見逃さないため、片頭痛の診断においては、過去の病歴やうっ血乳頭のような神経学的な所見の有無を確認する。うっ血乳頭とは、眼科における眼底検査で目の中の血管に異常が見られるもので、脳の腫瘍や出血が背景にある場合もある。片頭痛の診断基準は国際頭痛分類に従い、正しい診断をするのが大切だ。

(第71回おわり、第72回へつづく)

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