室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

骨粗鬆症の検査──骨密度の検査は繰り返してもムダ(27回)『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』(室井一辰著,洋泉社,2019)

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術
骨粗鬆症の検査──骨密度の検査は繰り返してもムダ
日本では10人に1人

 身体を支えるのに欠かせない骨は、年を取るにつれ強度が落ちていきます。骨密度という骨の量が減ることで起こるのが、骨 こつ 粗 そ 鬆 しょう 症 しょう と呼ばれる病気です。この病気の問題は、骨が弱くなることで、骨折が起こりやすくなる点です。特に太ももの骨である大腿骨の付け根の部分が折れてしまう「大腿骨頸部骨折」や背骨を形作る脊椎が折れてしまう「椎体骨折」などのリスクが高まることが、骨粗鬆症の大きな問題です。骨折をすることで、寝たきりになったりすれば、生活の質は大幅に低下してしまうことは想像に難くありません。
 統計によると、骨粗鬆症は40歳以上になると大腿骨頸部であれば、男性の12・4%、女性の26・5%に見られるとされており、患者数は1070万人と推計されています。比較的女性に多い病気と言えます。また、腰の背骨での骨粗鬆症に注目すると、患者数は1280万人と見なされており、日本人の10人に1人が骨粗鬆症という、非常に身近な病気と言うことができるのです。
 骨粗鬆症を調べるための検査が、「DEXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)」と呼ばれる方法です。平たく言えば、放射線を使って骨の量を測定する検査です。簡単に骨の状態が分かるので便利な方法として日本でも広がっています。

検査しすぎは意味なし

 しかしながら、チュージング・ワイズリーではこのDEXA方法をやりすぎないように注意が促されています。
 米国家庭医学会が、骨粗鬆症の検査について、65歳以下の女性および70 歳以下の男性では、特別なリスクがないときには検査を行うべきではない、と説明しています。そんなに消極的でいいのかとも思えますが、意味なく検査してしまうのは過剰医療で、誤った治療につながるためメリットよりもデメリットが多いという見方を示しているのです。
 もちろん、もっと年齢が進めばこの検査を行う意味はあります。
 ただし、米国リウマチ学会は、2年に1回を超える頻度でDEXA法による検査を繰り返す必要はないと指摘しています。検査の結果にはばらつきがあるために、何度も検査をするとそうしたばらつきもあって、意味のある検査結果につながらないとしているのです。
 治療を受けるようになれば、なおさらそれほど検査を頻繁にしなくても問題はない
とも指摘しています。
 米国リウマチ学会では2年に1回以上を繰り返す必要はないと指摘されていますが、最新の研究結果からは、67歳以上の女性であっても、1度検査をして正常だと判定されれば、10年間は問題ないともされています。検査を頻繁に行うのはやりすぎ、というわけなのです。