室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

関節の病気の薬──グルコサミンやコンドロイチンは意味がない?(46回)『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』(室井一辰著,洋泉社,2019)

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査してはいけない手術

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査してはいけない手術
関節の病気の薬──グルコサミンやコンドロイチンは意味がない?
年を取るごとに増える関節の痛みと、変形性関節症

 手足の関節の痛みは、年齢を重ねるほどにポピュラーになっていく症状です。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、手足の関節に痛みを感じている人の割合は年齢がいくほどに増えていき、女性では65歳以上になると1000人中114・9人と、10人に1人がかかえる症状となっています。男性ではやや少ないものの、85・2人がやはり関節の痛みに悩まされているようです。
 背景にはさまざまな病気が考えられるのですが、大きなところでは関節症や関節リウマチ、痛風などが関係している可能性があります。厚生労働省の患者調査によると、調査日の時点での総患者数は関節症が125万人、関節リウマチが33万6000人、痛風が11万1000人となっているのです。
 中でも多いのが関節症で、これは関節への刺激が繰り返されることで、軟骨が変化したり、摩耗したりして起こるものです。炎症も一緒に起きて関節が変形していくのですが、こうした特徴から変形性関節症とも呼ばれています。膝や肘、股間の関節でよく起こるものとされています。
 関節が痛むときには、医療機関で問診や身体検査などを行うほか、血液検査や画像検査などによって原因が調べられることになります。原因に合わせて治療方針が決められ、関節への負担を軽くするための生活習慣の改善のための指導が行われたり、関節の炎症を抑える薬が使われたり、場合によっては手術が行われることもあります。

軟骨のすり減りを防ぐ効果?

 そうした治療手段がある中で、関節の痛みに対して、グルコサミンやコンドロイチンを飲むことで和らぐのではないかという考え方があるようですが、これにはチュージング・ワイズリーからは否定的な見解が出されています。
 米国整形外科学会は、変形性関節症になっている人に対して、症状があってもグルコサミンやコンドロイチンを使ってはならないとしています。学会によると、いずれも関節の症状を和らげることができないからです。
 変形性関節症に対しては、軟骨がすり減っていくのを防ぐための治療法が分かっていません。グルコサミンやコンドロイチンについてもその効果は不明です。米国では、国立衛生研究所から、こうしたサプリメントには十分な効果がないという研究結果が公開されています。
 変形性関節症以外の原因に対しては指摘していませんが、関節の痛みの多くにはこれらのサプリメントは効果を持たない、という見解がはっきりと示されていることになります。
 日本ではいまだに「継続的に使用すれば効果が出る」といったようなことをうたっているサプリメントなどが販売されていますが、飲み続けていけばそのための出費は馬鹿になりません。効果やコストを踏まえると、使用しないことが妥当、と考えるほうが良いでしょう。