頭痛の検査──やるならMRI
もはや国民的な症状・頭痛
頭痛は文字通り頭が痛くなる症状。この頭痛というのは症状であって、病気ではありません。背景にはさまざまな原因があります。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、男性では2・1%、女性では5・1%が症状をかかえていると報告されています。女性であれば20人に1人が頭痛という計算になり、女性のかかえる症状としては肩こりや腰痛などに続き5位となっています。国民的な症状と呼んでもいいかもしれません。
背景にある原因もいろいろあるのですが、そのためにあらわれる症状も多種多様です。原因にもよりますが、脈拍と共に頭がずきずきする痛みのほか、頭をしめつけられるような痛み、あるいは頭を強く打たれたような衝撃的な痛みなどが起こることがある、と知られています。
お伝えしたように、頭痛の背景には複数の病気が考えられ、中には命にかかわるような脳出血や脳梗塞、くも膜下出血のほか、脳腫瘍などに由来する頭痛というものもあります。場合によっては、緊急の手術まで考える必要すらあります。
検査としては、問診や身体検査はもとより、X線検査、CT検査やMRI検査といった検査を行うことがあります。頭痛の原因によって治療法もさまざまですが、多くは命にかかわらないので、生活習慣を変えたり、薬物治療を行ったりするケースがほとんどです。とはいえ、命にかかわるようなケースでは、手術によって原因となっている病気を治療する必要があります。
画像検査をするとなれば、3万円くらいの医療費がかかることになるでしょう。薬物治療は使う薬にもよるものの、1回の服用で1000円(1度の処方で複数回分を処方されますので、処方されたときにかかる費用はさらにかさみます)くらいになることもありますので、経済的な負担は軽くはありません。
やるならばCT検査よりもMRI検査
ただ、頭痛の画像診断については、積極的に行えばいいというわけではないというのがチュージング・ワイズリーで示されている考え方となっています。米国放射線学会は、重症ではない頭痛に対しては画像検査の必要がない、という指摘をしています。
ポイントは、画像検査を行うケースを絞り込む、ということにあります。どういうことかというと、何らかの大きなケガにともなって意識を失っている場合、または、がんの転移の可能性があるケースにおいては画像検査を行うことが有効ですが、そのほかについては画像検査をしたからといってその後の治療に大きな影響はおよばないというのです。
さらに、画像診断が必要かどうか、つまり脳出血や脳梗塞のような緊急性の高いケースは、最初の問診や身体検査から絞り込めることが研究から明らかになっています。一方で、画像検査が必要ない頭痛も多くあり、そうしたケースで画像検査をするのはメリットどころかデメリットが大きくなるという点から問題視されています。全く関係のない異常が見つかって不要な検査や治療を行う羽目になったり、コストがかかったりするというわけです。
また米国頭痛学会からは、緊急時に画像検査をするときには、CT検査ではなく、MRI検査を行うように、という勧告がなされています。同じ画像検査のように思えて、見えるものが異なるからです。MRI検査はがんや血管の病気などの脳の組織の異常を確認する点で優れています。一方で、CT検査はX線を使う検査であるため、放射線の影響がデメリットになります。
また命にはかかわらないものの、悩んでいる人の多い片頭痛については、米国頭痛学会では画像検査を行わないように説明しています。片頭痛がより重い病気に発展する場合はまれで、画像検査をしたからといって、その後の治療に影響することがないからです。学会によれば、画像検査を行うのではなく、問診や身体検査によってほかの病気と見分けることこそが求められている、としています。
画像検査を行ったところで、身体の中の異常がすべてわかるとは限らず、むしろ無意味な発見につながるというのは、チュージング・ワイズリーでは共通した問題として指摘されるところとなっています。