室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(34回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)受けたくない医療31【小児科】 停留精巣の男の子に超音波検査をしない 米国泌尿器科学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第34回】

受けたくない医療31【小児科】
停留精巣の男の子に超音波検査をしない
米国泌尿器科学会

 男の子は生まれると、徐々に精巣、いわゆる睾丸が陰嚢に降りてくる。ただ、時々降りてこない子がいて、私自身も周りで子供の停留精巣に悩む保護者を知っている。生殖に重要な意味があるので、やはり親としては心配なものだ。
 難しいのは検査で、どこの医療機関でも苦労する。どこに睾丸があるのかよく分からないからだ。この停留精巣に関して、米国泌尿器科学会は、「停留精巣の男の子に超音波検査を実施してはならない」としている。身体検査で分からない精巣の場所を調べるのに、超音波は無益というのがその理由だ。
 臨床研究によると、超音波で検査したところで精巣の位置を特定する精度は低い。検査であると思っても、実はなかったりするのだ。逆にないと判定された場所に精巣がある可能性もある。精度が低くなるのは、超音波検査が周囲の組織や腸の中の空気の影響を受けるためだ。
 同様に放射線検査もあるが、睾丸を放射線で検査するのは、遺伝子に影響があるので避けるべきであり、検査の精度も低いとの指摘がある。MRIも同様に精度に疑問があるようで、結局は実際に触って確かめることになる。それが一番なのかもしれない。

(第34回おわり、第35回へつづく)