室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(93回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)突発性難聴で頭部、脳のCT検査は不要 米国耳鼻咽喉科学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第93回】

受けたくない医療90【耳鼻咽喉科】
突発性難聴で頭部、脳のCT検査は不要
米国耳鼻咽喉科学会

 突発性難聴は、人気歌手の発症がニュースとして流れることがある。一般の人でも珍しくはない疾患だが、米国耳鼻咽喉科学会は「突発性難聴では、頭部や脳のCT検査を行う必要はない」と言う。画像検査の問題は、神経や感覚における異常ではどうしてもつきまとってくるのだが、ここでも同様に問題になる。
 というのも、CT検査をしたからといって、初期の治療に役立つような有益な情報を提供しないからだ。しかも、CT検査の費用が高くつくうえに、患者を放射線にさらしてしまう。何度も指摘しているように、日本では3万円程度の費用がかかる。
 「CT検査を行うべきなのは、原因部位を特定可能な神経学的な問題があったり、外傷の病歴があったり、慢性的な耳の疾患を持っていたりする場合に限られる」と学会は説明する。
 なお、「Choosing Wisely」とは別で、米国耳鼻咽喉頭頸部外科学会の2012年のガイドラインでは、突発性難聴の原因を探るためにはCTではなく、MRIを勧めている。初期の段階ではCTは厳に慎むように求めている。
(第93回おわり、第94回へつづく)