室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(35回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)受けたくない医療32【糖尿病】 糖尿病では、スライディングスケール法を用いて 血糖値を管理しない 米国医療ディレクターズ協会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第35回】

受けたくない医療32【糖尿病】
糖尿病では、スライディングスケール法を用いて
血糖値を管理しない
米国医療ディレクターズ協会

 糖尿病でインスリン(※21)治療を受けている人にとって、スライディングスケール法はなじみがあるかもしれない。血糖値に応じて、インスリンを使う量を調整する方法だ。指に針を刺し、血を出して血糖値を測る。自己血糖測定(SMBG)と言って、その時の血糖値に従って使う薬の量を変えていく方法だ。
 だが、米国医療ディレクターズ協会は、「糖尿病では、スライディングスケール法を用いて血糖値を長期にわたってコントロールしようとしてもうまくいかない」と指摘している。一言で言えば負担が重いからだ。
 スライディングスケール法は、 高血糖をあらかじめ防ぐ方法ではなく、高血糖が生じている段階で血糖値の水準に合わせてコントロールする方法だ。スライディングスケール法はよかれと思ってなされている一方で、体が欲するインスリンの需要量に合わせられないことを示す臨床研究や、短期的にも長期的にも効果がないという意外な結果が出ている。
 スライディングスケール法を導入すると、結局、患者への負担が高まってしまうようだ。血糖値を測定する頻度が増えたり、インスリン注射の頻度が高まったり、手間が増えることで最終的にうまく治療を続けられなくなってしまう。食事のタイミングにかかわらずインスリン注射を行うため、低血糖の恐れが出るのも問題だ。
 基礎的なインスリン注射に加えて、食事のたびに速効型のインスリン注射を行う治療がより好ましい場合もあり、血糖値のコントロールも良好になると見込まれる。いずれにせよ、糖尿病の治療は長期間にわたるために難しい。

※21 インスリンはホルモンの一つで、膵臓のランゲルハンス島と呼ばれる組織のβ細胞から分泌されている。血液中からそれぞれの組織に糖分を取り込ませる作用を持っている。インスリンの分泌が悪くなったり、インスリンがあっても糖分を取り込みにくくなったりすると、血糖値が上昇して糖尿病になる。

(第35回おわり、第36回へつづく)

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