室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

停留精巣の検査──超音波検査は慎重に(35回)『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』(室井一辰著,洋泉社,2019)

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術
停留精巣の検査──超音波検査は慎重に
睾丸が降りてこない?

 男性の睾丸は、母親の胎内にいるときにおなかの中から陰嚢、いわゆる「ふくろ」の中に降りてきて形成されます。中には3~4%の頻度で、睾丸がふくろの中に降りてこないこともあります。これが停留精巣と呼ばれる状態です。この頻度は少ないようで、30人程度に1人なので、そう珍しいことでもありません。私自身でも身近にこのような経験をした子供のいる親御さんのことを聞いたことがあり、比較的多いのではないかと想像していました。
 精子は涼しい環境の方が好ましいので、ふくろの中に睾丸があるのが良く、さらに、睾丸がおなかの中にとどまったままですと、精巣腫瘍のリスクにつながることも知られています。
 赤ちゃん自身に起きる体の変化としては、停留精巣になることによってすぐに起きる症状がとくにあるわけではありません。ただ、親としては心配でしょう。手でさわって睾丸がふくろにないと、不安になって検査をして、停留精巣であることが分かると、手術をした方がよいのではと考える親御さんの気持ちは分かります。
 検査としては超音波検査などで睾丸の場所を調べて、降りてこないようであれば、手術という選択肢も視野に入ってくるでしょう。大人でも手術を受けるのは大ごとですが、赤ちゃんとなればなおさらです。

睾丸の場所は画像検査ではなかなか分からない

 しかし、米国泌尿器科学会は、停留精巣の男の子に超音波検査をしてはならない、との勧告を出しています。超音波検査を行っても、身体検査で分からないものがさらに詳しく分かることはないと指摘しているのです。これまでの検査結果から、統計的にも超音波検査をしたところで精巣の場所が特定できる可能性は低いと分かっているのです。検査をしても、睾丸があると思ったら、実はそれは睾丸以外の組織だったり、腸の中の空気だったりするということがよくあるようです。逆に、睾丸がないと思ったら、じつはあったりすることもあるのだとか。
 基本的に放射線の影響を受けやすい睾丸に放射線検査は行うべきではありません。遺伝に悪影響を及ぼしますし、精度も低いと学会は説明しています。磁気を使うので副作用の少ないMRIであっても、やはり精度に問題があると説明しています。
 時間が経ってくると、多くの場合には自然と降りてくることも多いものですから、焦ってすぐに病院に駆け込まない、というのが大切と言うことなのでしょう。

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