室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(46回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)受けたくない医療43【整形外科】 変形性膝関節症でも関節腔洗浄はするべきでない 米国整形外科学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第46回】

受けたくない医療43【整形外科】
変形性膝関節症でも関節腔洗浄はするべきでない
米国整形外科学会

 変形性膝関節症は、膝の炎症が起こって膝の軟骨がすり減ったり、膝の関節自体が損傷したりする疾患だ。その処置として、膝の中の関節腔を洗浄する方法が取られる場合がある。だが、米国整形外科学会は、「変形性膝関節症の患者には、症状があるからといって、長期的な症状緩和のために関節腔洗浄をしてはならない」と反対する。
 関節腔の洗浄とは、関節内部を満たす汚れた液体を、文字通りきれいな生理食塩水やヒアルロン酸で洗い流す手術である。炎症を起こすと、関節の内部に炎症のもととなる白血球の類が生じて水分が増える。それを針で取り除いて悪化を防ごうというものだ。
 一見効果もありそうだが、学会は症状を伴う変形性膝関節症の患者に行っても無意味だと指摘する。疼痛の改善にも、膝の機能改善にも、歩行にかかる時間の改善、膝の剛直性の改善、圧痛や腫れの改善にもつながらない。つまり、気休めにすぎない。一見、意味がありそうだと思っても、イメージに左右されるべきではない。処置費用は1000円程度と費用はかからないが、無駄ならばやる必要はない。

(第46回おわり、第47回へつづく)