サプリメント──健康への効果は「超」疑問
日本国民1人当たり年間1万円を費やす存在
調査会社インテージの調査によると、健康食品とサプリメントの市場規模は2017年の1年間で1兆5624億円に上りました。ちょっと想像しづらいかもしれませんが、日本国民が1年間に1人当たり1万円近くを費やしている計算になりますから、ごく身近な存在となっているのは間違いないと考えられます。インドの調査会社マーケットアンドマーケットによると、世界のサプリメント市場は2015年に1851億ドル、日本円でおよそ20兆円。日本市場の規模は小さくはありません。
サプリメントの種類も多岐にわたります。ビタミン、ミネラル、アミノ酸、脂質といった栄養成分から、食品成分、ハーブ類、プロバイオティクスなど。目的も健康増進、疲労回復、ダイエット、リラックスなどさまざま。
チュージング・ワイズリーでは、ビタミン類ではないダイエット系やハーブ系のサプリメントについては健康への効果はないと説明しています。米国医学毒性学会と米国臨床毒性学会が、健康維持の目的で使うのは勧められない、とはっきり声明を出しています。
とくに自然やナチュラルをうたっているものは、イメージだけで効果を伴わないものがほとんど、という見解。質の管理がしっかりしておらず、効果についても実証もなされていない点を大いに問題視しています。むしろ副作用による有害性が健康を悪化させる恐れがあると見ています。
このほかに米国予防医学会もサプリメントに関連して、がんや心臓血管の病気を防ぐ目的のマルチビタミンやビタミンE、ベータカロチンは効果がないと説明しています。いずれも根拠がないからです。
ベータカロチンは死亡のリスクを高める可能性
また、ベータカロチンを手軽にとれることをうたったサプリメントがありますが、これはむしろ喫煙者などの条件に当てはまる人では肺がんのリスクを高めてしまう可能性が示されています。ベータカロチンをめぐっては、一般的には健康に良いという印象を持っている人も多いかもしれません。あるいはもしかしたら、健康に有害であると聞いたことがある人もいるかもしれません。少なくとも、本当のところどうなのか、一般の方々にはっきりと知られている状況だとは言いがたいのではないでしょうか。この点についてはきちんとしたエビデンスがあります。1996年の研究では、ベータカロチンをとることで肺がんのリスクが16%上昇すると示されていました。さらに2017年には、ベータカロチンをとると、死亡のリスクが6%上昇するということまで示されたのです。一見、良さそうに思われる栄養素が、思わぬ有害作用を持つことを知るためには、あまりにも分かりやすい例かもしれません。
サプリメントは気軽に購入できて、使うのもハードルが低いものですが、そのサプリを使うことに本当に意味があるのかについての情報収集はとても大切です。