室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

赤ちゃんの超音波検査──記念のための画像撮影は危険(36回)『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』(室井一辰著,洋泉社,2019)

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術
赤ちゃんの超音波検査──記念のための画像撮影は危険
進化する赤ちゃんの超音波検査

 内閣府によると、日本の出生数は2016年に97万6978人となっています。出生数が山を作った1973年の第2次ベビーブームの209万1983人と比べれば大幅に減ったものの、日本では今日も多くの命が誕生しています。生まれたばかりの赤ちゃんはかわいいもの。まだおなかにいるときから、赤ちゃんの誕生を心待ちにするのは、親であれば自然なことかもしれません。妊娠から出産までにはさまざまな医療行為のお世話になります。そのうちの一つに超音波検査があります。超音波検査でできることは進化を続けており、最近では生まれる前から赤ちゃんの顔や身体の形が3次元で細かく観察できるようになっています。おなかの中にいる赤ちゃんの健康をチェックするためには活躍しますが、性別を知るため、さらには容姿がどんな風かを知ることまでできるようにもなっているため、乱用の危険性が指摘されています。

FDAは医療目的以外での使用では承認していない

 超音波検査は、大人であれば身体への負担は小さなものなので、検査として気軽に行われているものですが、赤ちゃんへの検査では必ずしもそうとは言い切れないようです。
 米国では、記念など医学的な目的以外での超音波検査は避けるように、という勧告が出されています。
 記念のためにビデオを撮りたい、写真を撮りたいといった安易な動機による超音波検査はリスクを伴うとして米国産科婦人科学会が注意を促しているのです。
 超音波検査は確かにCT検査やX腺検査と比べると、放射線の使用もなく安全性は高いとみなされていますが、あくまで医療行為であり、まだ知られていないリスクが存在している可能性は否定できません。米国食品医薬品局(FDA)は医学目的以外での使用は承認の対象にしていないとしています。
 生まれてくる子供を心待ちにする気持ちを否定するつもりはありませんが、そのために赤ちゃんに思わぬ負担をかけたくはないものです。