室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

ポリープがあるときは5年の間隔で(18回)『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』(室井一辰著,洋泉社,2019)

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術
ポリープがあるときは5年の間隔で

 米国消化器学会は、チュージング・ワイズリーのキャンペーンと連動して、この大腸内視鏡の検査の頻度についての方針を示しています。
 その内容は、高性能の内視鏡を使って、大腸全体の検査を行い、いったん陰性、つまりがんがなかったのであれば、次の内視鏡検査は10年後で大丈夫と示しているのです。逆に、それよりも短い頻度で大腸カメラを繰り返しては体に良くない、という旨を説いています。10年も空けていいの? と思うかもしれませんが、そのような考え方を医学の分野で世界の先端を走っている米国では示しているのです。50歳未満で一度内視鏡検査を受けており、特に家族ががんをわずらっていたといった遺伝的な要因、大腸の病気などの大腸がんにつながるようなリスクがないならば、大腸がんの可能性は低いと考えられるからです。若いうちに、便の中に血液が混じっていると言われて、大腸カメラを受けた場合、日本であれば高性能の内視鏡で大腸全体を調べられますから、それで大腸がんが見つからなければ、次に検査を受けるのは最低でも10年後でよい、と考えることができるのです。
 また、ポリープが見つかる場合もあるでしょう。そうしたときには「異常なし」とはなりませんから、別の考え方をするようにします。米国消化器学会では、「大腸内視鏡で1㎝未満の腺腫性のポリープが1つか2つ見つかった人で、グレードの高い異形成がなく、しかも完全に切除し切ったならば、最低5年は大腸内視鏡を繰り返す必要はない」と説明しています。
 異形成とは、がんのような特徴を示した状態のことです。グレードが高いとがんの可能性も出てきます。ですが、精密検査をしてグレードが高いとは言えず、切ってしまえば、5年間は大腸カメラを受けることはないと説明しているのです。家族ががんになったり、本人の希望があったりする事情も踏まえながら、医師と話し合うといいでしょう。
 日本は検査の体制が整っていますから、5年や10年も検査の間隔を空けるのはやりすぎ、という考え方の医師が一般的ではないでしょうか。日本の医師の考え方は尊重すべきだと思います。ですが、米国でここまで示したような方針が先進的な医学会により出されている事実は真剣に受け止めるべきではないでしょうか。そうした考え方を踏まえ、日本の医師とも相談しながら、柔軟に対応していくのがよいのだと思います。何より、一番大切なのは、そうした目安を持ったうえで、自分の体の異常に注意を払い、自分の検査について主体的に考えることなのです。

広告 クリックすると商品やサービスのページに移ります

広告 クリックすると商品やサービスのページに移ります

広告 クリックすると商品やサービスのページに移ります

広告 クリックすると商品やサービスのページに移ります

広告 クリックすると商品やサービスのページに移ります

広告 クリックすると商品やサービスのページに移ります