室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

大腸がんの検査――大腸カメラは10 年に1回で十分(17回)『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』(室井一辰著,洋泉社,2019)

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術
大腸がんの検査――大腸カメラは10 年に1回で十分
死亡に至るがんだけに心配だけど、検査はどれくらい念入りに行えば?

 大腸は、どこか腸の最後の部分、ということは知っている方もおられることでしょう。厳密に言えば、大腸は大きく3つのパートに分かれています。口に近い方から、盲腸、結腸、直腸と呼ばれます。便を作り、水分を吸収するといった機能を担っています。この大腸に、がんができることがあります。大腸がんです。
 大腸がんは、国立がん研究センターによると、女性では2番目に多いがん、男性では3番目に多いがんです。死亡する人となると、女性では最も多く、男性では3番目に多いがんです。それだけかかる人が多く、死亡につながる可能性も低くはないがんですから、早めに見つけることは大切です。
 そのために行うのが検便です。検診などで検便を行うのは、便の中に血液が混じっていないかを調べることで、大腸がんの可能性を見極めているのです。痔になっているといった理由による出血の場合もありますが、便の中に血液があるときは、腸からチューブ状のカメラを挿入して、内部を観察する「大腸カメラ」を行います。大腸内視鏡検査、というのがこの大腸カメラの医療用語での呼び方になります。
 実際の検査では、横になり、少し眠くなるような薬を注射して、まどろみの中で肛門からカメラを入れることになります。検査の前には、下剤を飲んで、胃腸をからっぽにする必要があります。トイレに何度も通うことにもなりますから、半日ぐらいつぶれてしまうのは間違いありません。検査には負担が伴うわけです。もちろんそのための費用もかかります。いくらかかるかは勤め先がどれくらい負担してくれるのかなどによって変わってきますが、総額1万5000円ほどは見ておいたほうがよいでしょう。
 この検査で実際に大腸がんが見つかった人もいれば、見つかったのはポリープだったという人もいるでしょう。一方で、問題がなくてほっとした、という方もおられるでしょう。検査を受ければ、結果がはっきりすることにはなるので、安心はできるかもしれません。
 ですが、検便をして血液の混じった便が見つかるたびに、大腸内視鏡を行うことになる人もいます。検便で血液が確認されると、精密検査を勧められるからです。このように精密検査を受けても「異常なし」が続くことはよくあることです。がん以外の原因で血液が混じることはあるからです。ですが、異常なしが続くと、受けた意味があったかどうか、わからなくなってくるものです。

(第17回終わり。第18回に続く)

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