室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(90回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)急性副鼻腔炎は軽症ならば画像検査は不要 米国耳鼻咽喉科学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第90回】

受けたくない医療87【耳鼻咽喉科】
急性副鼻腔炎は軽症ならば画像検査は不要
米国耳鼻咽喉科学会

 鼻の穴の奥には副鼻腔と呼ばれる空間がある。ここに炎症が起きて膿がたまるのが副鼻腔炎。なかなか治らないので厄介だが、画像検査はむやみにやるものではない。
 これまで胸、腹、頭などで画像検査の意義について考えてきたが、耳や鼻でも同じように画像検査には慎重になっていい。米国耳鼻咽喉科学会も、「急性副鼻腔炎では、重症でなければ、放射線による画像検査を行う必要はない」と言う。
 急性副鼻腔炎は最大4週間続く可能性もあり、化膿性の鼻漏があったり、鼻づまりを伴ったり、顔の疼痛、圧痛、腫れがあったりと苦痛は我慢しがたいものだ。それでも学会は、副鼻腔の画像診断は単純X線写真やCT検査、MRI検査も含めて重症でなければ行う必要はないと指摘する。
 画像検査は患者の出費を強いるもので、放射線にさらされる点で問題があるからだ。日本であれば、X線検査で5000円ほどの費用がかかり、CTやMRIならば3万円ほどの費用を要する。重症である場合、合併した疾患があったり、ほかの疾患が疑われたりする場合であれば意味はある。安易に検査を行うのは避けるべきというのは、ほかの疾患とも共通した考え方だ。

(第90回おわり、第91回へつづく)