室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(89回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)ドライアイでは涙点プラグは必要ない 米国眼科学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第89回】

受けたくない医療86【眼科】
ドライアイでは涙点プラグは必要ない
米国眼科学会

 ドライアイは、文字通り目が乾く疾患だ。通常、目の表面を覆っている涙液の層が枯渇するために起こる。涙液は、涙腺から出て涙点に返っていく。この涙点をせき止めて涙液の層を保とうというのが涙点プラグだが、米国眼科学会は、「軽いドライアイに対しては、ほかの治療手段を取る前に、涙点プラグを使ってはならない」と警鐘を鳴らす。
 ドライアイの治療方法として、薬剤を中心とした治療は意味がある。人工涙液、潤滑液、温かい湿気を伴った圧迫といった対処があり得る。環境を整えながら、ドライアイを改善させて涙液の層を正常化する手法だ。涙点プラグは「切り札」として取っておくべきで、涙液の層や眼瞼の治療を受けてもドライアイの症状が続く時に、初めて涙点プラグの追加を検討すべきだ。
 治療に手間もコストもかかる。日本であれば、涙点プラグの手術を受けると、片目で5000円程度の費用がかかってくる。そもそも治療効果の根拠も乏しい。簡単な方法で安価に治るならば、そちらを優先する方が好ましい。
(第89回おわり、第90回へつづく)