室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(32回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)受けたくない医療28【小児科】 熱性けいれんで画像検査はNG! 米国小児科学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第32回】

受けたくない医療28【小児科】
熱性けいれんで画像検査はNG!
米国小児科学会

 子供には熱を出してけいれんするという事態がよく起こる。いきなり子供が引きつけを起こしてしまうので、保護者としては背筋が寒くなる。しかし、熱性けいれんは基本的に自然と治る場合がほとんどなので、検査は最低限でよい。米国小児科学会も、「熱性けいれんの子供には、CTやMRIによる画像検査は必要ない」と指摘している。
 2006年の報告によると、初めて熱性けいれんを起こした71人の子供を対象に、脳の画像やカルテの情報を基に脳に異常があったかどうかを調べたが、脳の中に異常があった子は一人もいなかった。学会はほかの研究や総説も踏まえて、熱性けいれんではCTやMRIを撮る必要はないと声明を出したこともある。2000年の別の研究でも、熱性けいれんに限らず、子供のけいれんではいきなりCTを撮るべきでないと報告している。
 もちろん、CTやMRIを撮影することで安心が得られるという面はあるのかもしれない。でも、それはCTやMRIが全く無害である場合に限る。学会はメリットとデメリットを天秤にかけて、有害性がはるかに高いと判断しているのだ。
 学会がCTで問題視するのはとりわけガンの遠因になる点だ。CT検査は子供を放射線にさらす。放射線を使わないMRIも検査の時に鎮静薬を使うので問題だ。鎮静薬は麻酔そのもので死亡する恐れもある。また、前述したが日本における検査費用は3万円程度でコストも高い。画像検査の問題点は世界的な問題でどんな治療にでもつきまとう。
 医師が子供を診察する際は、熱性けいれんに注意するのではなく、むしろ発熱の原因をより詳しく検討してほしいと学会は求めている。

(第32回おわり、第33回へつづく)