室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(82回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)細菌感染が確認できない限り、 アトピー性皮膚炎では抗菌薬を服用しない 米国皮膚科学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第82回】

受けたくない医療79【皮膚科】
細菌感染が確認できない限り、
アトピー性皮膚炎では抗菌薬を服用しない
米国皮膚科学会

 米国皮膚科学会は、「アトピー性皮膚炎では、細菌による感染を確認できない限りは、経口の抗菌薬を使ってはならない」と言う。アトピー性皮膚炎の患者は大人にしろ子供にしろ、皮膚の表面にごく普通に黄色ブドウ球菌が存在する。この黄色ブドウ球菌が皮膚の炎症を起こす場合があるということは分かっているが、臨床研究で経口の抗菌薬の効果は証明されていない。菌を減らすために経口の抗菌薬を使ったからといって、アトピー性皮膚炎の赤みやかゆみといった症状、重症度が改善するかどうかは不明だ。
 逆に、感染がないのに経口の抗菌薬を使えば、耐性菌を生み出す弊害がある。また、抗菌薬は有害作用もあり、過敏反応を起こしてアレルギーを引き起こしかねない。そもそもアトピー性皮膚炎で感染が起こっているのかを証明するのは難しい。経口の抗菌薬はとにかくアトピー性皮膚炎の標準的な治療と併せて、細菌感染が明確に確認できる時に限るべきだと学会は強調する。

(第82回おわり、第83回へつづく)