室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(59回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)ぜんそくの診断ではスパイロメトリーを使って 米国アレルギー喘息免疫学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第59回】

受けたくない医療56【呼吸器科】
ぜんそくの診断ではスパイロメトリーを使って
米国アレルギー喘息免疫学会

 「スパイロメトリー」とは、肺の機能を調べる装置だ。肺活量を測ったことがある人ならば分かると思うが、管を口にくわえて、思い切り息を吹き込んだり、大きく呼吸をしたりして、肺の容積や息を出し入れする能力を調べる検査だ。
 米国アレルギー喘息免疫学会は、「スパイロメトリーを用いずにぜんそくの診断や治療をしてはならない」と指摘している。医師がぜんそくを診断して治療していく時に、症状だけを頼りに判断してしまうという事態は起こり得る。症状からは誤解を招く恐れがあって、ぜんそくではない原因で咳が出ている場合もある。
 学会によれば、スパイロメトリーは正しく診断するうえでは欠かせないステップだ。ガイドラインでもスパイロメトリーに価値ありと勧めるようになった。患者のぜんそくの背景にどんな問題があるのか、実際の治療効果がどれだけあるのか、といった判定に効果がある。逆に、病歴や身体検査だけで判定したのでは、治療効果を過小に見積もったり、過大に見積もったりする可能性が生じる。診療費が増加したり、診断や治療が遅れたり、診療の誤りによる被害は避けたいものだ。
 日本では、スパイロメトリーの検査は1000円程度で実施できる。ぜんぞくという診断が下れば1カ月で1万円単位の出費は覚悟しなければならない。あらかじめ正しく診断することで余計な治療を避けられる。ぜんそくの診断は安易になされる傾向にあり、結果として診断が誤りだったケースもしばしばだ。ここは知っておくべきポイントだと思う。

(第59回おわり、第60回へつづく)

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