室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

がんの治療──休息で「体力回復」は正しくない(43回)『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』(室井一辰著,洋泉社,2019)

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査してはいけない手術

世界の医療標準からみた受けてもムダな検査してはいけない手術
がんの治療──休息で「体力回復」は正しくない
がんになったら体を休める?

 がんになると疲れやすくなることもあり、安静にしているのが当たり前と思われがちです。医療従事者でさえ、がんになった人に対して激しい運動を避けるように勧める傾向があるということです。しかし体をいつも休めていたとしたら、すこし考え直す方が良さそうです。
 というのも最近の研究では全く逆で、ウエイトトレーニングや有酸素運動に取り組むことで、がんの治療を受けている人が疲労を感じづらくなると分かってきたというのです。さらに、不安やうつ病のためにも効果的だといいます。チュージング・ワイズリーでは、がんになったから休息を取って体力を「回復させる」という考え方は必ずしも正しくないとしています。
 米国看護学会は、がんの治療中、あるいは治療後は運動を患者に勧めていくように、という指針を出しています。全米の看護師に対して、がんの治療を受けている人に接するときには、運動に取り組むことを促すように言っているわけです。がんになると疲れやすくなって、運動なんてやりたくない、というのではいけないということです。
 良いとされているのは、中くらいの強度の運動。たとえば、サイクリング、ウオーキング、スイミング。1週間に150分ほど。できるならば、ウエイトトレーニングを週に2~3回。
 身近にがんと闘っている人がいる、あるいはご自身ががんであるならば、ぜひ運動に取り組むことを考えてみると良いかもしれません。もちろん無理はできませんから、医師とも相談しながらにするといいでしょう。