【第101回】
受けたくない医療98【循環器】
心筋梗塞の際に、血管の狭い患者であっても
詰まっていない血管まで治療しない
米国心臓病学会
心臓を取り巻いて心臓に血液を送る冠動脈。この血管が狭くなって詰まると心臓が動かなくなる。太ももや手首からカテーテルと呼ばれる管を通して、心臓の冠動脈にまで伝わせて、風船やステントで血管を広げる治療「経皮的冠動脈形成術(PCI)」が広く実施されている。場合によっては、詰まっていない血管まで「念のため」と拡張する場合もあるようだ。とりわけ血管の狭窄が強い時に問題になるが、安易に過剰治療に走るのはよくないとのことだ。
米国心臓病学会は、「血管狭窄の強い『ST上昇タイプの心筋梗塞(STEMI)』で経皮的冠動脈形成術を行う時に、血管狭窄の元凶ではないところにまでステントを入れて血流を確保する必要はない」と警鐘を鳴らす。
STEMIは心筋梗塞としても血管の狭窄度が高いので、警戒すべき病気と言える。だからといって、狭窄のない動脈にまでステントを留置するのは、死亡率や合併症を増やす結果につながりかねない。血流の不十分な患者で効果を示す可能性はあるが、狭窄のもとになっている病変以外を治療することに意味があるかどうかは従来の臨床研究で効果を証明されていない。
(第101回おわり、第102回へつづく)