室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(95回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)心臓の画像検査では放射線被曝を可能な限り抑制すべき 米国核心臓病学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第95回】

受けたくない医療92【循環器】
心臓の画像検査では放射線被曝を可能な限り抑制すべき
米国核心臓病学会

 心臓の血管の病変を観察するために、放射線を使った検査が一般的に行われる。循環器系の画像検査では、ほかの診療科の画像診断にも増して強い放射線を使うところもある。造影剤という放射線を遮断する液体を注射して、繰り返し撮影をし、血管の詰まりを詳しく見ていくからだ。
 一般的なCT検査の被曝量が1~10ミリグレイであるのに対して、血管の造影検査になると100~1000ミリグレイに及ぶこともある(※36)。かなり慎重に実行したい検査だというのがこの数字から分かるだろう。 医学的に必要と考えられる場合であっても、常に放射線被曝への配慮は欠かしてはいけない。特に血管造影では、ガンのリスクを高める可能性は気にしたい。
 米国核心臓病学会は、「心臓の画像検査を行う際には、可能な限り放射線の被曝を防がなければならない。効果が限られるような検査は実施しない決断も大切」と述べる。

※36 福島第一原子力発電所の事故では放射線被曝の問題が浮上した。国際放射線防護委員会の基準では、平常時に一般の人が受ける放射線の限度量は1年間で1ミリシーベルトとされており、住民の避難を考えるうえでの目安になった。1ミリシーベルトはおよそ1ミリグレイに換算できるので、被曝量が100ミリグレイから1000ミリグレイという検査の重みを推し量ることができるだろう。

(第95回おわり、第96回へつづく)