室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(77回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)認知症でPET検査の場合はまず専門家の診断を 米国核医学・分子イメージング学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第77回】

受けたくない医療74【脳神経】
認知症でPET検査の場合はまず専門家の診断を
米国核医学・分子イメージング学会

 認知症をPET検査で判定しようとする動きがある。「アミロイドイメージング」といって、世界的にも注目されている検査だ。
 アルツハイマー病の進行は止められないが、あらかじめ病気の兆候を知ることができれば、食べるものに気を使ったり、意識的に頭を使ったりして認知症の進行を止められるかもしれない。そのための検査方法として浮上しているのがアミロイドイメージングだ。
 アミロイドイメージングはPET検査によって行う。既に何度も触れているように、PET検査は放射性物質を使って特定の物質を検出する方法だ。アミロイドイメージングとは名前にも関係する通り、認知症の原因とされるβアミロイドと呼ばれる物質の存在を調べる方法である。
 だが、米国核医学・分子イメージング学会は、「認知症の診断目的でPET検査を行う場合、専門家の診断を受けずに実施すべきではない」と語る。PET検査による認知症検査は、臨床研究に基づいた客観的な根拠がないからだ。「費用や放射線被曝のリスクに見合った効果がない」と指摘する。
 日本であれば、およそ10万円で検査を実施している施設がある。保険は2014年の段階では適用されず、自分で全額を支払わないと受けることができない検査だ。
 認知症関連の疾患は様々だが、PET検査をしてもそれぞれ画像が似通ってくるので区別がつかないという問題があるうえに、解釈自体も難しい。例えば、βアミロイドのPET検査では、認知能力が正常な人でもβアミロイドが陽性と出る可能性がある。その時にどう診断に反映するか、現在までの科学では結論が出せていない。そのような状況で検査するのは問題だろう。
(第77回おわり、第78回へつづく)