室井一辰 医療経済ジャーナリスト

医療経済ジャーナリスト、室井一辰。『絶対に受けたくない無駄な医療』の連載をはじめ、医療経済にまつわる話題をご提供いたします。

(75回)『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)単回の失神で、脳のCTやMRI検査は不要 米国内科医学会

絶対に受けたくない無駄な医療

絶対に受けたくない無駄な医療

【第75回】

受けたくない医療72【脳神経】
単回の失神で、脳のCTやMRI検査は不要
米国内科医学会

 失神するとびっくりするものだ。脳に異常があるのではと心配になるのは自然なことだろう。ところが、必ずしも画像検査をすべきではないという指摘が米国から出ている。米国内科医学会は、「単回の失神の際に、神経学的な診察で正常であった場合には、CT検査にせよ、MRI検査にせよ、脳の画像検査を行ってはならない」と言う。頭痛の時もそうだったが、失神であれば画像検査くらいした方がいいのでは……と思いそうなものだが、そうではないところに医学の難しさがある。
 学会によれば、特にけいれんや神経学的な症状、神経学的な異常の兆候が繰り返し出ないような場合は、中枢神経系が関与している可能性は極端に低い。脳の画像検査をしても効果はないと想定されるという。医師が診察すれば、画像検査をしなくても問題はないと判断できる。
 医師が診察もそこそこに画像検査をしようとするならば、「ちょっと待って」と制してもいいかもしれない。医師が無用と分かっているのに画像検査をしているのであれば、それこそ3万円ほどの検査費用を得たいだけなのかもしれない。

(第75回おわり、第76回へつづく)