【第69回】
受けたくない医療66【精神科】
不眠症で安易な睡眠検査は好ましくない
米国職業環境医学会
不眠症は大きな社会問題とも言える。仕事の効率に関わるので労務の問題でもある。米国職業環境医学会は、「慢性疲労や不眠症を訴える労働者に対して、安易に睡眠検査(睡眠ポリグラフ検査)を実施してはならない」と指摘する。睡眠ポリグラフ検査とは、一晩の睡眠の状況を、眼球の動きや心拍の変化などで調べる検査だ。
慢性疲労があってほかの睡眠障害に関わる症状のない人、例えば喉が痛かったり乾燥したり、いびきがうるさかったりして起きてしまうといった特徴がない人、あるいはリスク因子のない人、例えば肥満だったり頸部径が太かったり、咽頭・喉頭の周囲の軟部組織が厚かったりしない人には睡眠ポリグラフ検査は必要としない。
睡眠ポリグラフ検査は、睡眠障害の診断のために必須である一方で、睡眠障害症状が見られないような不眠症の評価のためには通常必要はない。
不眠症を訴える場合には、基本的には十分な睡眠を取るよう促し、勤務日程の問題で睡眠時間が変則的だったりしているならば、行動変容や睡眠時間の改善を提案したり、睡眠の環境改善を提案したりするのが優先される。過剰な検査は好ましくない。
(第69回おわり、第70回へつづく)