【第68回】
受けたくない医療65【精神科】
精神病でもないのに、子供にいきなり薬剤を使わない
米国精神医学会
子供がADHD(注意欠如多動症)やうつ病、自閉症などの疾患にかかっているのではないか、と不安を感じる親は多いかもしれない。実際に子供を医療機関に連れて行き、「精神疾患ではない」と診断されてそのまま終わりという場合も少なくないと思うが、その際に薬剤を処方されることがしばしばある。ここに警鐘を鳴らすのは、米国精神医学会である。
学会は「子供や青年期の人に精神的な問題が起こった場合、統合失調症や大うつ病性障害といった精神病でない限り、安易に抗精神病薬を初回治療として使ってはならない」と強調する。
最近の研究結果によると、子供に対する抗精神病薬の処方は過去10~15年間の間で3倍にも増加した。特に、家庭の収入が低い場合や、黒人やスパニッシュといったマイノリティーの子供で薬剤の処方が増えており、統合失調症というより、むしろほかの精神的な疾患や重度のチック障害(※32)がある子供に薬の投与が目立つ。だが、臨床研究では抗精神病薬の効果や耐性は不十分であり、体重増加やメタボリック症候群といった副作用のほか、心血管系の問題が発生するリスクが成人よりも子供では増えそうだということも分かっている。
日本でも米国のような問題が生じているならば、是正は必要になる。
※32 同じ動作を突発的に繰り返したり、同じような言葉を突発的に発したりする症状を言う。目を頻繁に閉じる癖や鼻を鳴らす癖、咳払いを何度もしてしまう癖がある人はよくいるが、そうした癖が高じてくると病的なチック症と判断できる。
(第68回おわり、第69回へつづく)